ベランダ菜園を始めたいと思ったら、育てる野菜を決めるとともに、プランターや土、肥料などの準備も必要です。ですが、ホームセンターに行っても様々な種類がありすぎて、どれを選べばいいか分からないという方も多いのではないでしょうか。そこで、理想の庭づくりをサポートする日本初のガーデンキュレーター小島理恵さんに、プランターと土の選び方や肥料をまくポイントなどを解説していただきました。
株式会社Q-GARDEN代表
横浜市生まれ。信州大学農学部森林科学科卒業後、1994年に大手造園会社に入社。その後、独立し、2011年に株式会社Q-GARDENを設立。庭づくりに関わる多方面の関係者と同時に双方向の調整・仲介を行い、お客様の理想により近いお庭の提供を目指す日本初のガーデンキュレーターとして活躍中。
出版本: 『はじめてでもカンタン!おいしいベランダ野菜』(監修)
https://q-garden.com
ガーデンキュレーターの小島理恵です。今回はベランダ菜園をはじめるために必要なプランターや土、肥料の選び方についてお伝えします。特にプランター選びはとても重要なポイントで、サイズの合わないものを使うと野菜が上手く育ちません。プランターの一般的な素材や形にどのような種類があるのか、この機会におさえておきましょう。
また、ベランダ菜園で育てられる野菜は以前の記事でも紹介しています。どの野菜から育てれば良いか分からないという方は、合わせて読んでみてください。季節と難易度に分けて解説しています。
ベランダ菜園で育てられる野菜について詳しく知りたい方はコチラ
プランターの大きさと素材を理解しよう!
まずは一般的なプランターの素材と形にどのような種類があるのか、簡単にご紹介していきます。
一般的なプランターの素材
プランターの素材は大きく分けて素焼き・プラスチック・ブリキ・木製・陶器の5種類に分けることができます。それぞれ一長一短の性質を持つため、よく考えて選ぶようにしましょう。
●素焼き
表面に細かい穴がたくさん空いているため、吸水性と通気性に優れています。ただし、重量が重く、割れやすい素材なので、大きなものになると土を入れた状態で移動させるのが難しくなってきます。
●プラスチック
軽くて持ち運びにも便利な実用性の高い素材です。色や形も豊富なバリエーションで販売されています。ただ、通気性があまり良くないので、野菜が根腐れを起こさないように注意が必要です。
●ブリキ
オシャレな雰囲気を演出しやすい素材です。持ち運びも簡単なので、移動も気兼ねなく行えるでしょう。ただ、強度の面を考えると、大型の野菜を育てるには不向きです。排水穴が備わっていないこともあるので、その際は底に穴を開けるなどして対応しましょう。
●木製
素焼きほどではないものの、排水性と通気性に優れている素材です。自然素材のため、野菜の素朴さとマッチして統一感を際立たせることができます。ただ、長年使用しているとプランター自体が腐ってしまうので、他の素材よりも買い替えの時期が早めに来ることも考えられます。
●陶器
素焼きの表面に釉薬(ゆうやく)という薬品を塗装して焼き上げたものです。デザイン性に優れているので、インテリアとしても活用できるでしょう。ただし、表面に塗装された薬品の影響で通気性が悪く、割れやすいので、取り扱いには注意が必要です。
一般的なプランターの大きさ
プランターは横幅のサイズをもとに「型」の単位で記載されることが多いです。例えば、横幅が60センチであれば「60型」となります。販売店ではパッケージやシールに記載されているので、よく確認して選ぶようにしましょう。
●小型
横幅が20センチから40センチ、土の容量は6リットルから10リットルです。少ないスペースで、苗がそれほど大きくならない野菜を少量育てたい場合に使用すると良いでしょう。
●標準
横幅60センチから65センチ、土の容量は12リットルから20リットルです。一般的なプランターのサイズと言われるのがこのタイプで、収穫期間が比較的短い野菜を育てるのに向いています。
●大型
横幅が80センチ以上で土の容量は30リットルから40リットルです。栽培期間が長く、実が大きくなる野菜をたくさん育てたいときに使用しましょう。
●深型
横幅と深さが35センチ以上で土の容量は20リットルです。大型の野菜や土の中で育つ根物野菜を育てるのに適しています。
育てたい野菜に応じてプランターを使い分けよう!
小型プランターで育てられるオススメ野菜
ラディッシュやレタスミックス、パセリ、ミントといった料理の付け合わせに使う野菜は小型のプランターで栽培可能です。成長しても、苗の高さがそれほど大きくならないので、限られたスペースでも育てることができます。
標準プランターで育てられるオススメ野菜
ホウレンソウ、小松菜などの葉物野菜のほか、さやいんげん、ブロッコリーなどは標準型プランターで栽培できます。どれも3ヶ月以内に収穫できますし、大きさも実物野菜ほどではないので、標準型を使えば問題なく育てられます。
大型プランターで育てられるオススメ野菜
ナスやピーマン、落花生など長期間の栽培が必要で、比較的実が大きくなるものは大型プランターを使用します。幅を広くとれるサイズなので、野菜と野菜の間に十分な間隔を空け、大きな実が育つようにしましょう。
深型プランターで育てられるオススメ野菜
トマト、きゅうり、トウモロコシなどの背が高く育つ野菜やサツマイモ、ミニ大根などの土の中で育つ根物野菜は深型プランターがオススメです。しっかりと根を張ることができるよう、たくさんの土を収容できるものを選びましょう。
ベランダ菜園を始める前に覚えておきたい土と肥料の選び方
初心者は培養土を選ぶのがベスト
野菜を元気に育てるには良い土が不可欠です。良い土とは、排水性、通気性、保水性、保肥性の4つの条件がバランスよく備わっているものを言います。これらの条件に合う土を手軽に用意したいという方は、培養土を選ぶと良いでしょう。培養土は、家庭菜園でよく使われる、「赤玉土」「黒土」「鹿沼土」などに堆肥や肥料がミックスされた土のこと。野菜を育てるのに最適な比率にあらかじめブレンドされているので、すぐに栽培を始めることができます。
肥料の三大要素とは?
野菜を元気に育てるために必要な肥料ですが、なかでも「肥料の三大要素」と呼ばれる野菜の成長促進に重要な養分があるのをご存知ですか。
肥料の三大要素とは、チッ素(N)、リン酸(P)、カリ(K)の3種類。
チッ素(N)は「葉肥」とも呼ばれ、葉や茎の成長を促進させる効果があります。リン酸(P)は「実肥」とも呼ばれ、花や実の成長を充実させます。また、カリ(K)は根や茎を丈夫にするために使われ、野菜の免疫力を高めます。
たいていの肥料には、この三大要素が複合的に混ぜられています。市販の肥料袋には必ず、チッ素(N)、リン酸(P)、カリ(K)の三大要素の割合が○:○:○という表記で記載されていますので、購入時に確認してみてください。例えば、葉物野菜を育てるのであればチッ素が多めのものを、実物野菜を育てるのであれば、リン酸多めのものを選ぶと良いでしょう。
化成肥料と有機肥料の違い
肥料には大きく分けて、化成肥料と有機肥料の2種類があります。
化成肥料はチッ素、リン酸、カリのどれかを2種類以上含み、化学的に合成された肥料のことです。野菜の成長に必要な成分が直接的に入っているので、即効性があります。
有機肥料は植物の油かすや動物の糞といった天然素材を原料にしたものです。化成肥料に比べて成長に必要な養分が少なく、効き目は遅いものの持続性があり、土の中に生息する微生物の活動を活発にする効果があるので、結果的に野菜を美味しく育てることができます。
元肥と追肥のポイント
肥料を与えるタイミングは、種や苗を植える前に行う「元肥(もとごえ)」と、葉物野菜や実物野菜が大きくなり始めた時期にする「追肥(ついひ)」の2回あります。
基本的に、元肥では有機質の固形肥料を使います。じっくりと土の中に溶け込み、野菜が育ちやすい環境を整えるためです。
トマトやナスなどの実物野菜を育てる際の追肥は、最初の収穫をする頃にまず1回行います。元肥と同様、有機質の固形肥料、もしくは液肥でも大丈夫です。固形の場合は1ヶ月に1回、液肥は1週間に1回程度の頻度で与えることにより、秋までの長い期間、収穫を楽しむことができます。
プランター・土・肥料の選び方 まとめ
基本的に野菜は、枝が大きく伸びるものほど、根っこの張り方も大きくなります。育てたい野菜が決まったら、どの程度大きくなるかを調べて、最適なサイズのプランターを選ぶように心がけましょう。プランターと土、肥料のことをしっかり理解すれば、きっと美味しい野菜を育てることができるはずです。
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