テレワークなど働き方の変化により、都心から郊外・田舎へIターンやUターンを検討される方が増えています。それに伴い、大規模な家庭菜園に憧れを抱く方の割合も増えていると言います。では、田舎でよく見かけるような広い庭で家庭菜園やガーデニングを行う場合、どのようなことに気を付ければ憧れを現実にすることができるのでしょうか。理想の庭づくりをサポートする日本初のガーデンキュレーター小島理恵さんにお話を伺いました。
株式会社Q-GARDEN代表
横浜市生まれ。信州大学農学部森林科学科卒業後、1994年に大手造園会社に入社。その後、独立し、2011年に株式会社Q-GARDENを設立。庭づくりに関わる多方面の関係者と同時に双方向の調整・仲介を行い、お客様の理想により近いお庭の提供を目指す日本初のガーデンキュレーターとして活躍中。
出版本: 『はじめてでもカンタン!おいしいベランダ野菜』(監修)
https://q-garden.com
ガーデンキュレーターの小島理恵です。広い庭で行う家庭菜園とガーデニングの楽しみ方、注意点をご紹介します。前回は畳1畳分くらいの畑と小規模なガーデニングについて解説しましたが、今回は大規模な畑づくりと世界観を演出できるガーデニングを中心にお話したいと思います。
前回の記事はコチラ
広い庭で行う家庭菜園のポイント・注意点
慣れないうちは畑と樹木栽培をバランス良く
広い庭があっても、まだ野菜作りに慣れていないうちは、大部分のスペースを畑にするのは控えたほうがいいでしょう。畑が広くなればなるほど、雑草取りや土作りなどの準備だけでなく、実際に野菜を植えてからの水やりや管理の手間がどうしても負担になってしまいます。そこでオススメなのがブルーベリーやレモンなど、実のなる樹木の栽培。これらは植えた後の手間がそれほどかかるわけではなく、基本的に水をあげるだけで成長します。さらに毎年のように収穫することができるので、自家製野菜を食べた時と同じような達成感を得ることができるでしょう。畑を広げるのは慣れてから、徐々に、ということを意識すると、負担をあまり感じることなく家庭菜園を楽しめるでしょう。
複数の野菜を同時に育てるには相性が大切
ある程度の規模の畑を作ったら、少量多品種を意識して、様々な野菜を育てることをオススメしています。畳6畳分くらいの畑があればトマトやジャガイモ、ナス、キュウリ、ゴーヤなど、家庭菜園で代表的な野菜を同時に栽培できるので、食卓に彩を持たすことができます。同時に育てる際は、それぞれの野菜が持つ性質をしっかりと理解して、植える場所に注意しましょう。
野菜は多湿を好むものと乾燥が好きなものの二種類に分けることができます。例えば、ナスやキュウリ、ゴーヤなどはインドや東南アジアなどの熱帯雨林が原産地なので多湿を好み、トマトやジャガイモなどは中南米の乾燥した地帯を原産としているので、乾いた土の方が育てやすいというわけです。性質が合わない野菜を同じ畑に植えると、上手く育たずに枯らしてしまうリスクがあります。育てたいものが決まったら、まずはその野菜の原産地や水やりの頻度などをしっかり確認すると良いでしょう。畑を作る時は複数の区画に分け、相性の良い野菜同士を植えるようにすれば、栽培時の負担やリスクを軽減できます。
家庭菜園に適した環境を整えよう
広い庭の場合、家庭菜園やガーデニングに適した環境を整えることが大切です。土を掘り起こすためのスコップや鍬、広範囲に水を撒けるホースなどが必要になるので、これらを収納できる物置を庭に用意します。
また、可能であれば、庭にもシンクや洗い場があると便利です。収穫したばかりの土が付いた野菜をキッチンで洗う手間が省けますし、道具の汚れもすぐに洗うことができます。もし、庭にある蛇口が地中に埋め込まれた散水栓式の場合は、柱上の立栓式に変更することを検討してみても良いかもしれません。
広い庭でのガーデニングは世界観を演出できる!
広い庭で行うガーデニングの魅力は、世界観を演出できること。取れたての野菜を食べられる家庭菜園も魅力ですが、興味のある方はガーデニングにも着手してみてください。先ほどお伝えした通り、樹木であれば基本的に水やりのみで成長してくれるので、手入れに掛かる手間や負担はそこまで大きくありません。
例えば、最近ではアオダモやヤマボウシ、モミジなどを植えて、雑木林風のガーデニングをされる方が増えています。これらの樹は比較的、水を多く欲しがる性質なので、植えて1年目の夏場は、1日に1回くらい水をあげましょう。冬場であれば土が乾燥したらあげる程度で問題ありません。
また、庭を南国風に演出したいのならば、ユッカやオリーブを植えてみるのはいかがでしょうか。例えばオリーブは地中海を原産としており、乾燥を好みます。多湿だと良くないので、水はけの良い土を選びましょう。ただし、あまりに土が乾きすぎると枯れてしまうことがあるので、夏場の乾燥しやすい時期は1日に1回程度、完全に乾燥する前に水を与えてあげます。冬場は乾燥気味に育てた方が良いので、1週間に1回程度の水やりで問題ありません。
生態系が集まる庭づくりにもチャレンジしてみよう
庭に様々な工夫を施すことで、小鳥や蝶などの生態系を集めることができます。例えば、海外では蝶を集めることを目的とした庭づくり「バタフライガーデン」が盛んに行われていることをご存知でしょうか? ブッドレアやヒガンバナ、ヒャクニチソウなどの花の蜜を好む傾向があります。多様な生物が集まる庭づくりに興味のある方は、チャレンジしてみても良いでしょう。
小鳥のさえずりを楽しみたい場合は、ジューンベリーやブルーベリーなどの樹木を植えてください。実をついばみに小鳥達が庭に集まるので、自然が感じられる心地良い空間を演出することができますよ。庭にスイレン鉢を置くのも良いですね。スイレン鉢の周りにトンボやカエルなど、水場を好む生き物が集まってくるようになります。その際は蚊の幼虫であるボウフラ対策として、鉢の中で金魚やメダカを飼育しましょう。
ウッドデッキは家庭菜園やガーデニングと相性抜群!
ウッドデッキがあれば、家庭菜園やガーデニングの幅を広げることができます。部屋とフラットに隣接しているウッドデッキにプランターを置くことで、手軽に栽培や収穫ができるようになるのは大きなメリットです。特にハーブやパセリといった料理の添えものに使えるものを育てておくと重宝するでしょう。花を育てるのもオススメですね。地面に植えるよりも断然眺めやすくなりますよ。
また、ウッドデッキに並べるプランターの素材と色を屋内のインテリアに合わせると、全体的にまとまりが出て、よりオシャレ感を演出できます。例えば、部屋のインテリアに白を基調としたものが多いのであれば、プランターもアイボリー系の色に統一してあげましょう。木製家具にこだわったナチュラルテイスト志向の部屋であれば、プランターの素材を素焼きに統一してみるのも良いですね。
広い庭で行う家庭菜園とガーデニングの楽しみ方 まとめ
広い庭だからこそできる家庭菜園とガーデニングの楽しみ方があるように、広いからこその注意点もあります。大切なのは自分のペースで、負担を感じない範囲で楽しむことです。時には友人や専門家の力を借りることも視野に入れ、徐々に理想の庭を作っていきましょう。
庭づくりをもっと知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
ウッドデッキは必要?ガーデニングの楽しみ方は?プロに教わる「子どもが喜ぶ庭づくり」
おしゃれな庭を維持するには? 庭づくりのプロが教える芝生や庭木などの手入れのコツ
食べて楽しむキッチンガーデンに興味のある方は、こちらの記事もご覧ください。
プランターでベランダ菜園を始めよう! ガーデニングのプロ直伝!初心者にもできる難易度別に見る旬な野菜の育て方
小鳥などを楽しむビオトープガーデンに興味のある方は、こちらの記事もご覧ください。
野鳥を呼べて果物も食べられる!専門家が教えるおいしいビオトープガーデンのつくり方