子どもを犯罪被害から守るには? 登下校時のブザーは必須? プロが教える防犯教育

現在の日本でも発生している子どもを狙った犯罪。そんなニュースをお子様の外出中に見てしまったら、とても心配になりますよね。では、大切な我が子を犯罪から守るにはどうすれば良いのでしょうか? JA共済の「子ども防犯マニュアル」の監修もされている防犯住宅診断士の瀬尾さちこさんに伺いました。

防犯住宅診断士・瀬尾さちこのプロフィール
瀬尾さちこ プロフィール

日本防犯住宅協会認定 防犯住宅診断士・認定特定非営利活動法人日本防災士機構認定・防災士・整理収納コンサルタント

広告代理店、デザイン事務所、旅行代理店での勤務を経て結婚後、2010年に整理収納アドバイザーとして開業。その後、防犯住宅診断士、防災士の認定資格も取得し、現在は主に製造現場のコンサルティングのほか、ウェブサイトを中心に防犯・防災・整理収納に関する記事の監修・執筆や、講演などを行なっている。また、愛知県内・岐阜県内のコミュニティエフエムでラジオパーソナリティとしても活動している。
ホームページ:くらしの取扱説明書

防犯住宅診断士の瀬尾さちこです。子どもは成長するにつれて、通学路や遊び場など親の目が届かない場所で過ごす時間が増えていきます。そんななかで、私たちは悪質な犯罪者から子どもを守らなくてはいけません。今回はそのために大人がやるべきことと、子どもたちに教えておきたいことなどをお伝えしていきます。

子どもの犯罪被害の傾向

子どもの犯罪被害の傾向

出典:「令和3年警察白書」(警視庁)

昨年に警視庁が発表したデータによると、13歳未満の子どもの犯罪被害件数は減少傾向にあります。さらに近年ではコロナ禍の影響で外出機会が減ったことで、通学路や遊び場での被害が減っているとの見方もできますね。しかし被害件数がゼロになることはなく、今後コロナ禍が終息した後、今までの反動で伸び伸びと外で遊ぶ子どもたちを犯罪者が狙うとも考えられます。「今はあまり外出しないから大丈夫」「被害件数が減っているなら安心」と警戒心を緩めるのではなく、今後に備えて今のうちからしっかりと防犯対策を教えておきましょう。

子どもの被害件数
子どもの被害件数
略取誘拐の被害件数

出典:「令和3年警察白書」(警視庁)

2011年~2020年の10年間で言うと、子どもが被害に合う犯罪のなかで一番件数が多いのは「強制わいせつ」であり、2020年も700件を超える被害が報告されています。さらに、子どもが狙われる割合が一番高い「略取誘拐」については、ここ3年間で毎年100件を超える被害のデータが出ています。これらの犯行に及ぶ人物像は、いかにも怪しい風貌をイメージしてしまいがちですが、犯人はごくごく一般的な見た目をしているケースがほとんどです。そして普通の人のふりをしてじっくりと下調べをおこなうので、大切なお子様がターゲットにされないためにも、しっかりとした対策をしましょう。

子どもにどう教える? 登下校中や遊び場での防犯対策

子どもにどう教える? 登下校中や遊び場での防犯対策

子どもに教えておくべき防犯対策

まず子どもには、できるだけ複数人で行動してひとりになる時間をつくらない、なるべく人気のない道を通らないということを伝えてあげてください。外にひとりでいる時間が長かったり、人目につかない場所に子どもだけでいることが多かったりすると、犯罪者から狙われやすくなってしまいます。下校時には真っ直ぐお家に帰ってくるよう指導することも大切ですね。通学路以外の場所で道草をすると犯罪被害に遭うリスクは高くなりますし、お子様がどこにいるのかを親御さんが把握できない状況になるのは良くありません。学校が終わって遊びに行くとしても、必ず一度お家に帰るように教えましょう。さらに、道を歩くときには駐車されている車には近づかないように教えるのも重要です。車に乗せられてしまうと逃げ場がなくて、とても危険だということを覚えておきましょう。

また、犯罪者に狙われないための対策だけでなく、何かあった場合の対応もしっかりと教える必要があります。まず、危険を感じた際には大声で助けを呼ぶことを教えてあげてください。周囲に人がいるときには「誰か助けて」よりも「そこのお兄さん助けて」など、個人を指して助けを求めると気付いてもらいやすいということも教えてあげると良いですね。それから、逃げ込める場所を知っていることも重要です。地域の「子ども110番の家」や交番はもちろん、コンビニや美容院、知り合いのお家など、いざとなったときに逃げ込める場所は多ければ多いほど良いので、散歩や買い物をする際などにお子様と一緒に確認しましょう。ほかにも、絶対に犯人に反撃しないという指導をすることも大切です。とくに正義感の強い子は、友だちが危険な目に遭っていると自分が助けないと、と思ってしまうので「大人に助けを求めること」をしっかりと教えてあげてください。

防犯対策とともに、お子様には普段からNOと言って良いということも教えましょう。頭を撫でられたり、体を触られたりしたとき、いやだったらNOと言えるようにしておかないと、犯罪者に同様のことをされても拒否できなくなる子もいます。普段から安易に体を触らせてはいけない、そして嫌なことは嫌だと意思表示して良いのだと伝えてくださいね。

子どもの防犯のために親ができること

子どもの防犯のために親ができること

小学生にもなると、親が同伴せずに子どもだけで遊ぶ機会が増えるかと思います。小学校の高学年ともなると、どこで遊んでいるかもいちいち聞かないご家庭があるかもしれません。しかし、「今日はどこで遊んだのか」「どんなことがあったのか」などを親から聞くようにすることも防犯対策のひとつです。普段からお子様に通学路や遊び場の様子を聞くことで、子どもに話しかけてくる人物の存在などをチェックしましょう。広場や公園など、子どもたちの外での遊び場をときどき見に行くのも良いと思います。

また、子どもに「知らない人について行ってはダメ」と指導するのは、実はあまり有効ではありません。事前に何度か話しかけて、子どもにとって顔見知りになってから犯行に及ぶような犯罪者も多くいるからです。さらに犯罪者はお子様の名前や愛称を知ると「○○ちゃん」と名前で呼びかけ、子どもの警戒心を薄れさせようとします。なので、通学時の持ち物などは外から見てわかりやすい部分に名前を書かないように気を付け、お子様には顔見知りであっても安易に付いて行ってはいけないと教えてあげましょう。

SNSには要注意! 子どもをネット犯罪に巻き込まないためには?

SNSには要注意! 子どもをネット犯罪に巻き込まないためには?

わいせつ目的による子どもの被害は性別に関係なくリスクがあり、今までは登下校時などの野外で犯人に目を付けられるパターンがほとんどでした。しかし近年では、SNSの普及によってインターネット上で狙いを付けられるケースが増えています。ネット上から犯罪に巻き込まれないためには、子どもに公開型SNSを利用させないことはもちろん、親御さんも注意が必要です。お子様自身がSNSをやっていなくても、親御さんのアカウントに載せた写真から狙われる可能性があります。お子様の名前、通っている学校、住んでいる地域などの個人情報や、それらが特定されるような写真は絶対に載せないようにしましょう。「本名じゃなくあだ名なら……」と思う方がいるかもしれませんが、子どもは愛称で呼ばれると警戒心が薄れる傾向にあるため、犯罪者に知られるとむしろリスクが高まります。SNSに載せる情報は犯罪者にも見られると意識して、しっかりとお子様の情報を守ってあげてくださいね。

小学生の「防犯ブザー」を選ぶポイントと使い方の注意点

小学生の「防犯ブザー」を選ぶポイントと使い方の注意点

子ども向けの防犯グッズにはさまざまなものがありますが、やはり効果が高いのは「防犯ブザー」です。常に持ち歩くことで防犯対策となるアイテムなので、お子様自身が気に入って自分から身に付けたいと思えることも重要です。かわいいデザインや子どもに人気のあるキャラクターものなどいろいろありますので、購入するときにはお子様と一緒に選んでみてくださいね。機能的には、しっかりと大きい音が鳴って電池が長持ちするタイプが良いでしょう。

防犯ブザーを使うときの注意点

防犯ブザーを使うときの注意点

防犯ブザーは肌身離さず身に付けておくことがとても重要です。ランドセルや手提げ鞄などに付けておくと、いざと言うときにすぐ鳴らせなかったり、帰宅して遊びに行くときに置いて行ったりしてしまうことがあるので、ストラップなどで首から下げておくと良いでしょう。目につきやすいところに付けると素早く鳴らせるだけでなく、防犯対策をしているというアピールにもなり、犯罪者からも狙われにくくなります。実際に危険を感じたら、防犯ブザーを鳴らして犯罪者の顔面めがけて投げつけるようにして使うことも教えてあげましょう。

また、使い方をお子様に教える際、意外に思われるかもしれませんが、私は防犯ブザーで遊ばせることを推奨しています。遊びで鳴らすことで使い慣れていき、実際に危険な目にあったとき躊躇なく活用できるようになると考えているからです。もちろん、外でむやみに鳴らして周囲に迷惑を掛けたり、大人をからかうイタズラで使ったり、友達の顔には投げつけてはいけないと教えたうえで、遊んでも良いと言ってあげましょう。ときどき鳴らすことで電池切れにも気付きやすくなるという利点もあります。お子様には鳴らなくなったらすぐ報告するように伝えて、親御さんも定期的に電池をチェックしてあげてください。

防犯ブザー以外の防犯グッズは必要?

防犯ブザーさえあれば、ほかの防犯グッズはとくに必要ないというのが私の見解です。護身用アイテムは持っていると、犯人に反撃しようとして逆に危険な状況となる場合もありますし、友だちに対して悪ふざけで使ってしまうことも想定できるため、子どもには持たせないほうが良いでしょう。
また、防犯の観点から小学生にスマートフォンを持たせるか悩んでいる親御さんも少なくないと思いますが、機能を子ども用に制限しているものであれば持たせても良い、というのが私の考えです。常に連絡が取りやすい状態であることは防犯上プラスになります。

子どもを犯罪被害から守るには? プロが教える防犯教育 まとめ

学校が終わったら道草せず帰る、危険を感じたら助けを求めるなど、大人にとっては当たり前に感じることでも、子どもには教えなければわからないこともあります。お子様が思春期になっても、日々のコミュニケーションを大切にしながら、しっかりと防犯教育を実践しましょう。大切なお子様が傷つくことのないよう、ご家族で防犯について考えてみてくださいね。

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