新型コロナウイルスの影響で、自宅で過ごす時間が増加傾向に。それに伴って、家庭菜園を始める方が増えていると言います。なかでも注目されているのが、プランターで野菜を育てるベランダ菜園。マンションやアパートでも手軽に育てられるのが魅力ですよね。では、家庭菜園のプロが勧めるベランダ菜園に適した野菜とは? 理想の庭づくりをサポートする日本初のガーデンキュレーター小島理恵さんに伺いました。
株式会社Q-GARDEN代表
横浜市生まれ。信州大学農学部森林科学科卒業後、1994年に大手造園会社に入社。その後、独立し、2011年に株式会社Q-GARDENを設立。庭づくりに関わる多方面の関係者と同時に双方向の調整・仲介を行い、お客様の理想により近いお庭の提供を目指す日本初のガーデンキュレーターとして活躍中。
出版本: 『はじめてでもカンタン!おいしいベランダ野菜』(監修)
https://q-garden.com
ガーデンキュレーターの小島理恵です。今回はベランダ菜園に適したオススメ野菜を、収穫できる季節に分けてご紹介します。育てやすさに応じて、初級編、中級編、上級編の野菜をご用意しましたので、参考にしてみてください。
それぞれの野菜は種植えや苗植え、収穫時期についても解説しています。これらは関東地方で栽培することを想定して記載していますが、野菜の適切な栽培時期はその地域の気候によって異なるものです。
北海道や東北地方などの寒冷地にお住いならば、春野菜と夏野菜は記載された日付よりも1ヶ月遅く、秋野菜と冬野菜は1ヶ月早めに栽培を行なってください。一方、沖縄や九州地方などの暖地にお住いならば、春野菜と夏野菜は1ヶ月早く、秋野菜と冬野菜は1ヶ月遅くすると良いでしょう。
春に収穫できる旬の野菜~初級編~ ラディッシュ(ハツカダイコン)
春に収穫できる野菜の初級編はラディッシュです。ラディッシュは別名でハツカダイコンと言われるくらい、短期間で収穫可能な初心者でも育てやすい野菜です。ラディッシュは1年中育てられる野菜ではありますが、最も育てやすい季節は春なので、3月頃に種植えするとよいでしょう。この時期であれば、土が乾燥することも少ないので、基本的に水やりの頻度は1日1回で問題ありません。1日経っても土が湿っているように感じたら、その日は水を与えなくても大丈夫です。
栽培方法……種植え
種植えの時期……3月
春に収穫できる旬の野菜~中級編~ ルッコラ
中級編はルッコラです。春に種をまく「春まき栽培」と秋に種をまく「秋まき栽培」の2種類がありますが、春まき栽培の方が短期間で収穫を行うことができるのでオススメです。収穫までにかかる日数は約30日。初級編のラディッシュよりも10日間ほど栽培時期が長くなりますが、基本的な栽培方法はラディッシュと同じです。
栽培方法……種植え
種植えの時期……4月~6月
春に収穫できる旬の野菜~上級編~ グリンピース
上級編はグリンピースです。グリンピースを上級編に挙げた理由は、収穫までにかかる期間が長いため。種植えの時期は10月から11月の秋頃で、収穫できるようになるまで半年ほどの日数が必要になります。種植えのポイントは、ひとつの穴に3粒ほどの種を植えるということ。例えば、直径30センチほどのプランターで栽培を行う場合は、等間隔ごとに空けた穴に3つ程度の種をまくようにしましょう。水やりは1日に1回程度を目安に、土を触ってパサパサだと感じたら水をあげるようにしましょう。
栽培方法……種植え
種植えの時期……10月~11月
夏に収穫できる旬の野菜~初級編~ ミニトマト
夏に収穫できる野菜の初級編はミニトマトです。短期間で栽培できますし、水やりの頻度も1日に1回程度と少ないことから、家庭菜園を始めたばかりの方でも育てやすい野菜です。5月中旬頃に栽培を始めれば、7月から8月の間には食べられるようになります。
ミニトマトを栽培する際は、種ではなく、苗を植えることをオススメします。実がなる野菜は発芽させるまでが一番大変なので、慣れないうちはホームセンターなどで売っている「ポット苗」を購入して育てると良いでしょう。
栽培方法……苗植え
苗植えの時期……5月中旬
夏に収穫できる野菜~中級編~ さやいんげん
中級編はさやいんげんです。5月頃に種を植えれば、7月には収穫ができます。豆類はそれほど発芽させるのに苦労がいらないので、種植えでも問題ありません。ただし、発芽する前後の時期に水やりを丁寧に行っていないと、芽が大きく育ちづらいので注意が必要です。発芽する前までは土が湿っている状態にし、発芽してからは土が乾いたら水をあげるというペースに変更しましょう。
栽培方法……種植え
種植えの時期……5月
夏に収穫できる野菜~上級編~ トウモロコシ
上級編はトウモロコシです。5月の中旬頃に苗を植えれば、7月の中旬、もしくは下旬頃に収穫できます。トウモロコシは乾燥が苦手な野菜なので、毎日の水やりは欠かさずに行いましょう。また、背の高い野菜なので、台風が来る前などには、倒れたり茎が折れたりしないよう、プランターを固定して、支柱を立てると良いでしょう。
トウモロコシは風媒花というタイプの植物で、風に飛ばされた雄花の花粉が雌花に受粉することで実を作ります。しかし、ベランダでのプランター栽培だと、育てられる個数に限りがあるので、自然に任せると受粉しないケースがあるのです。未受粉を防ぐため、茎の先端に生えた雄花の花粉を、ひげのように生えている雌花に、綿棒などで付けてあげる人工的な受粉作業をしましょう。しっかりとした受粉が出来ていないと、部分的に歯が抜けたような実りの少ないトウモロコシになってしまいます。
栽培方法……苗植え
種植えの時期……5月中旬
秋に収穫できる野菜~初級編~ さつまいも
秋に収穫できる野菜の初級編はさつまいもです。5月から6月頃に苗を植えれば、10月から11月の間は収穫することができます。さつまいもは乾燥した土を好むので、水やりは1日1回で問題ありません。植え付けの時期になると園芸店などで、つる状の苗が販売されるので、購入して植えてみましょう。また、プランターは大きくて深さがあるものがオススメです。目安として、幅60センチ、深さ40センチ程度のものを選べば、さつまいもは大きく育つことでしょう。
栽培方法……苗植え
苗植えの時期……5月~6月
秋に収穫できる野菜~中級編~ 落花生
中級編は落花生です。苗植えの時期は5月から6月頃で、10月頃には収穫が可能になります。落花生をお家で育てれば、市販ではなかなか食べられない「茹で落花生」を楽しむことができますよ。美味しいのでぜひ、試してみてください。
さつまいもより難易度が上がるのは害虫が発生するリスクがあるからです。アブラムシやカメムシなどの害虫が好んで集まる野菜なので、プランターの置き場所を風通しの良い場所に移すか、定期的に有機系の薬剤を撒くなどして対応しましょう。
栽培方法……苗植え
苗植えの時期……5月~6月
秋に収穫できる野菜~上級編~ 枝豆
上級編は枝豆です。5月頃に種を植えれば9月頃に収穫できます。ただし、ひとつのプランターで取れる量はお皿1枚分と非常に少ないので、家庭菜園に慣れてきて、ほかの野菜作りにも挑戦してみたいという方は、育ててみてはいかがでしょうか。
枝豆は水を好む野菜なので、1日に1回、もしくは2回程度、土が乾いたらこまめに水を与え、発芽時期に枯らしてしまわないように注意しましょう。また、枝豆にとっては害虫となるテントウムシが好んで集まる野菜なので、週に一度は有機系の薬剤を撒くなどの予防対策を習慣的に行ってください。
栽培方法……種植え
種植えの時期……5月
冬に収穫できる野菜~初級編~ 葉物野菜 (ホウレンソウ・水菜・小松菜・春菊)
冬に収穫できる野菜の初級編はホウレンソウや水菜、小松菜、春菊などの葉物野菜です。どれも10月頃に種を植えれば、12月頃に収穫できるので、それほど苦労せず育てることができます。
栽培時のポイントは2週間に一度くらいのペースで間引きを繰り返し行うということ。種が発芽して苗になり密植してきたら、お互いの成長を妨げないように、混み合っている箇所を引き抜いてあげましょう。水やりの頻度はこの時期であれば、2日に1回程度を目安にして、土が乾いたらあげる程度のイメージで問題ありません。
栽培方法……種植え
種植えの時期……10月
冬に収穫できる野菜~中級編~ ブロッコリー
中級編はブロッコリーです。種からでも栽培可能ですが、慣れないうちは苗から育てると良いでしょう。10月頃に苗を植えれば、12月から1月頃に収穫できるようになります。ガの幼虫やアオムシが寄り付きやすいので、防虫ネットを活用しましょう。水やりは2~3日に1回程度で大丈夫です。
栽培方法……苗植え
苗植えの時期……10月
冬に収穫できる野菜~上級編~ ニンジン
上級編はニンジンです。ニンジンと聞くと、地植えをイメージされる方が多いかと思いますが、「ミニニンジン」と呼ばれる小さく育つ品種を選べば、プランターでも栽培可能です。9月下旬頃から10月頃に種を植えれば、翌年の1月頃に収穫できるでしょう。
上級編とした理由は、根元までまっすぐ綺麗に育てることが難しく、慣れていない方が栽培すると、根元が二股に分かれてしまうことがあるからです。その理由として考えられるのが、土の中の異物。小さい石ころでも成長の妨げになってしまう可能性があるので、土作りの段階から余計なものが混入していないか、念入りに確かめるようにしてください。
栽培方法……種植え
種植えの時期……9月下旬~10月
プランターで行う難易度別ベランダ菜園について まとめ
今回ご紹介した野菜すべてに言えることですが、ベランダ菜園の場合、風通しの良いところで育てることを意識してください。風通しの悪い、湿った空気の場所であればあるほど、害虫は野菜の周りに蔓延するようになってしまいます。しかし、手間暇をかけた分だけ、収穫時の喜びもひとしお。ぜひベランダ菜園にチャレンジして、美味しい野菜を味わってみてください。