お家を建てるときに欠かせないのが土地選び。マイホームを建てるなら、できるだけ安全で安心できる場所に住みたいですよね。では、その地域の防犯状況を知るためにはどんなところを見ていけば良いのでしょうか? 防犯住宅診断士の瀬尾さちこさんに、安全な土地の選び方についてアドバイスを伺いました。
日本防犯住宅協会認定 防犯住宅診断士・認定特定非営利活動法人日本防災士機構認定・防災士・整理収納コンサルタント
広告代理店、デザイン事務所、旅行代理店での勤務を経て結婚後、2010年に整理収納アドバイザーとして開業。その後、防犯住宅診断士、防災士の認定資格も取得し、現在は主に製造現場のコンサルティングのほか、ウェブサイトを中心に防犯・防災・整理収納に関する記事の監修・執筆や、講演などを行なっている。また、愛知県内・岐阜県内のコミュニティエフエムでラジオパーソナリティとしても活動している。
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防犯住宅診断士の瀬尾さちこです。住居を構えるときは、安心して暮らせるように防犯や防災も含めて検討することが大切です。防犯対策にはカメラや窓用ブザーといったさまざまな防犯グッズももちろん有効なのですが、実は土地選びや街選びも重要。防災ならお家を建てる前にハザードマップなどで確認できるように、防犯に関しても事前に確認できることがあるんですよ。今回は、防犯性の高い土地や街をどうやって見極めるのか、ポイントをお話していきます。
「街歩き」で防犯度をチェック! 狙われやすい土地の特徴とは?
住みたい土地の様子を知る手軽な方法として、ストリートビューなどで周辺の様子を確認する方法があります。不動産屋さんから情報を得るのも良いですね。しかし一番重要なのは、実際にその地へ足を運んで、自分の目で見て、耳で聴いて確認すること。実家の近くなど土地勘があるところなら、どこにどんな施設があってどのくらいの騒音がするのか、街の雰囲気が明るいのか暗いのかなどがわかると思いますが、そうでない場合は実際にその場所へ行って「街歩き」をすることが大切です。
防犯チェックポイント①騒音と街灯
街歩きをするとき、最初に確認したいポイントは、近くに大きな音を出している工場やパチンコなどの店舗がないかどうか。周囲がうるさいと、ガラスを割って侵入されても気付きにくいので空き巣などに狙われやすいんですね。また、暗がりが多いと犯罪者が潜みやすいので、街灯が少ない街も狙われやすい土地と言えます。どうしても暗くなりやすい狭い路地が多い地域も要注意。とくに女性や子どもは、性犯罪などの個人を狙った犯罪被害に遭うリスクも高くなってしまいます。
これらのポイントを踏まえて、いろいろな曜日や時間帯で街歩きをしてみましょう。昼は気にならなかった音が夜だと気になったり、夜になると街灯がなく真っ暗になったり、平日は静かだけれど休日になると車通りが増えたりと、違ったパターンで街を見ることで気付くことがあるはずです。一方で、街全体の手入れが行き届いて、暗くなる場所がないように街灯が設置されているのは、安全な街の特徴と言えますね。
防犯チェックポイント②街の掲示物と地域の取り組み
街歩きをしていると、「防犯モデル地区」や「防犯パトロール中」といった看板が立てられていることがあります。そのような地区は、一見するとしっかり防犯に取り組んでいて安全だと思うかもしれませんが、実は空き巣などの犯罪が発生している地域であることが多いんです。本来、人を使ってパトロールするべきなのに看板だけで済ませているといったケースもあるので、むしろ注意が必要ですね。犯罪リスクが低い地域かどうかは看板などの掲示物ではなく、実際に自治会がパトロールなどの防犯活動をしているかで判断できます。人が活動しているということは犯罪が起こりにくく、地域のコミュニティができあがっているということ。そんな街は外から犯罪者が入り込みにくいんですよ。
積極的に防犯に取り組んでいる地域かどうかは、ある程度インターネットで調べられますので街歩きをする前に確認しておくのも良いですね。防犯カメラの設置といった街ぐるみの取り組みを発信することは、犯罪者を寄せ付けにくくする効果があります。
防犯チェックポイント③街全体の清潔さ
ゴミが不法投棄されていないか、落書きが消されずにそのまま放置されていないかも確認しながら街歩きをしましょう。もしゴミや落書きが放置されていたら、空き巣に好まれる街だと言えます。住民が周囲に対して無関心という証拠なので、犯罪者は不審な行動をしたり、窓を割って大きな音を出したりしても通報される可能性は低いと受け取るからです。
そのほかにも、周囲のお家の庭にスコップやほうきなど尖ったものが出しっぱなしになっていないかも、可能な範囲でチェックしましょう。空き巣は基本的に侵入に使う道具を現地調達するので、周囲に道具が出しっぱなしで片付けられていないお家が多いのは、空き巣にとって都合が良い環境となってしまいます。さらに街路樹やお家の庭木の手入れがされておらず、鬱蒼と茂っていたり、枯れているプランターを放置していたりするお家が多い場合も要注意。モラル意識が低い地域には犯罪者が入り込みやすいと覚えておいてください。
防犯チェックポイント④お家に残る“犯罪の痕跡”
さらに細かい部分を確認したいなら、迷惑にならない範囲で周辺のお家の様子もチェックしてみましょう。まずは、雨樋(あまどい)の色が変わっているところはないか。雨樋は普段あまり触る機会がないものなので、もし色が変わっていたら空き巣などが手を掛けて侵入できるかどうか下調べした可能性があります。低めの塀がある場合は、足跡が付いていないかもチェック。実際に侵入できるかどうか足を掛けたことで足跡が残っているケースがあるのです。また、塀の近くに道路標識などがある場合は、手の跡が残っていることも。道路標識に手を、塀に足を掛けた可能性があるわけですね。これらの痕跡が多いほど、空き巣被害が多い傾向にあるので、注意が必要な地域と言えます。
また、空き巣は玄関周りにマーキングすることが多いということも覚えておきましょう。表札やインターホン、ポストなどに油性マジックで何か書かれていたり、シールが貼られていたりしたら狙われている可能性が高いお家です。たとえば「S」は独身で、「WS」は女性ひとり暮らし、「8-19」は8時から19時まで不在という印で、もともとは悪質な訪問販売がセールスの目印に付け始めたと言われていますが、空き巣が下見時に付ける場合もあるわけです。もし、現在のお住まいで不審なマークやシールを見つけたらすぐに取り除いてくださいね。
防犯のプロが教える! 街歩きのアドバイス
街歩きをしているときに住民の方と出会ったら挨拶をしてみてください。見知らぬ人に対しても気さくに挨拶を返してくれる街には、地域にしっかりとしたコミュニティが築かれていることが多いんですね。人付き合いが希薄なほうが気楽で良いという方もいるかもしれませんが、住民同士のつながりで街の防犯性は高くなります。挨拶や声掛けによって犯罪者の約6割が犯行を諦めたというデータもあるので、挨拶ができる街は犯罪が起こりにくい街づくりをしている、ということなんですね。初対面の方への挨拶はドキドキするかもしれませんが、私の経験上、とくにご高齢の方は挨拶から会話が弾むことが多かったです。会話が弾めば、地域の情報収集もできますよ。
ちなみに街歩きの際には、犯罪者の目線になることも重要だったりします。犯罪者の思考を想像するのはなかなか難しいとは思いますが、潜みやすい場所や人目を避けての路上喫煙といった悪いことができそうな場所をイメージしながら歩いてみましょう。そういった場所が多いと、犯罪が起こりやすい傾向にあります。ほかにも街を歩いていて、「薄暗いような気がする」「何か嫌な感じがする」という“感覚”は意外と的中するものです。私も実際に事件が起こった場所でそう感じたことがありました。歩いたときの感覚も、安心して暮らせる街かどうかを見極めることに繋がります。
“コレ”が近くにあったら要注意! 防犯を考えた土地選び
街全体の様子や治安を確かめたあとは、具体的にどの土地に家を建てるかを決める必要があります。実は防犯の観点から考えると、「ここなら絶対安全! 」という土地は存在しなくて、たとえ警察署の近くでも犯罪が起こることもあるんですね。一方で、“コレ”の近くは避けた方が良いという土地はありますので、参考にしてみてください。
●幹線道路の近く
幹線道路の近くは犯行後の逃走経路が確保されやすく、ほかの車にまぎれ込んで逃げられてしまうので、犯人の特定が難しくなります。車の走行音が騒がしいことも多く、周囲の人が犯行に気付きにくい傾向があるので、家を建てるのには適していない土地と言えるでしょう。
●大きな音を出す施設の近く
工場やパチンコ店などの大きい音が出る施設の近くは、窓ガラスを割った音や助けを呼ぶ声などがかき消されやすく、被害者自身も近隣も異常に気付きにくいので注意が必要です。
●公園の近く
無断駐車をして下見をされたり、散歩と見せかけて家の様子を見張られたりするので、防犯の観点では好ましくない土地です。日常的に不特定多数の人が出入りしているので、見知らぬ人がいても違和感を覚えにくい立地というわけです。
●空き地・空き家・駐車場の近く
空き家や長期不在のお家、空き地などは、普段は人が出入りしない場所なので犯罪者が潜んでいても気付きにくく、見張りの拠点にされやすい場所です。また、駐車場、とくにコインパーキングのような不特定多数の人が利用する場所の近くは、逆に出入りが多くて利用者の中にまぎれ込まれてしまうので、防犯には適していません。
総じて、大きな音が出ている場所や隠れられる場所、逃げやすい場所などが近くにある土地は、被害に遭う可能性が高くなるので注意が必要です。アパートなどの集合住宅に隣接している土地も人にまぎれて逃走されやすいので、要注意な場所と言えますね。
ちなみに「旗竿地」は、防犯面ではあまり良くない土地と言われていますが、対策をきちんとすればむしろ良いと考えています。敷地の入り口と家の玄関、さらに勝手口にも門扉を付ければ、侵入しにくいうえに逃げにくい立地となるので、空き巣が避ける条件と一致するわけです。
防犯住宅診断士が教えるマイホームの土地選び まとめ
マイホームの防犯対策と聞くと玄関ドアの鍵を厳重にしたり、防犯カメラを設置したりといったイメージがありますが、街選びや土地選びも非常に重要なことです。鍵やカメラは後付けでもどうにかなりますが、土地は簡単に変えることはできません。住みたい土地があるのなら、リスクを知ったうえで住まいの設計や設備で工夫する、お家の間取りやデザインで譲れないところがあるのなら土地選びを重視して、リスクの低い場所を選ぶ。このようにそれぞれの暮らしに合わせた防犯意識を持つようにしましょう。
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