注文住宅を建てるにあたり、多くの人が建物のみだけでなく土地も一緒に考える必要があります。「土地探し」をすすめるには、インターネットの検索サイトやチラシ、不動産会社の店頭などの利用が多いと思いますが、建物と土地のどちらから考えるのがいいのか、どこのエリアのどんな土地を購入すればいいのか判断がつかず、途方に暮れてしまった方もいるのではないでしょうか。今回は、注文住宅を建てる際に必要な土地の探し方について、コツや注意したいポイントを紹介します。
どんな場所で暮らしたい? まずは希望することの整理からスタート
土地探しを始めるにあたっては、まずは希望することの整理からスタートしましょう。「どのようなエリアでどのように暮らしたいのか」考えましょう。利便性を重視するのか、落ち着いた環境で暮らしたいのか、自身やご家族の希望することに優先順位をつけて条件を絞りましょう。
最寄り駅までの距離・交通アクセス
駅までの徒歩分数が短い方が通勤はラクですが、駅の近くは賑やかなことが多く、防犯面が気になる人、静かに過ごしたい人は注意が必要です。
通勤・通学が必要な人には、職場や学校へのアクセス環境は重要です。最寄り駅まで徒歩何分程度か、バスや自転車を利用した場合はどうか、帰宅時間が遅くなった場合に夜道は街灯が整備されているか、通り道にどんな店があるかなどチェックしましょう。駅に近いほど便利ですが、防犯上の観点も踏まえると、駅前の繁華街から少し離れたエリアを選んだ方が安心して暮らせる側面もあります。また、通勤時に使う電車など公共交通機関の運行本数、ラッシュがピークを迎える時間帯、始発と終電の時刻なども把握しておくと安心です。
〇〇に近い場所
子どもがいる家庭なら、保育園や学区内の学校がどこにあるか一番に確認したいところ
ショッピングセンターやスーパー、コンビニ、商店街など、日常的な買い物が自分にとって便利にできるかどうかは外せないところ。次に病院、夜間救急、図書館、公園なども子どもがいるとよく使うので、使いやすい場所にあるとよいでしょう。また、役所をはじめとする公共施設や金融機関なども近くにあると便利です。子どもが公立の学校に通う場合は、学区内の学校を調べるとともに、通学路での通学に子どもの足でどのくらいの時間がかかるのか確認しておきましょう。「近ければ近いほど便利」と考えがちですが、学校が目の前にある立地の場合、お友達と一緒に通学できなかったり、たまり場になりやすかったりすることも考えられます。あまり遠いと子どもの負担も大きいので、5分~15分くらいの通学時間がよいでしょう。また、通学路は距離だけでなく、安全性も考慮が必要です。信号機のない交差点やガードレールがない歩道、見通しが悪い道路や交通量が非常に多い道路なども危険があります。人通りが少ないところも不審者などの心配がありますので、注意が必要です。
街の将来性を予測する
再開発の前後でガラリと生まれ変わった街も少なくありません。
土地を購入して家を建てようとしている人の多くが、人生の長い時間をその土地で暮らそうと考えているでしょう。10年、20年後もその街で快適に暮らせるように、将来的にどのような街になるのかイメージし、自身や家族の姿を想像します。再開発計画があるか、新駅の設置予定はあるか、人口は増えているのか減っているのかといった情報をヒントに、どのような街になっているのか予測してみましょう。
こんな土地は大丈夫?
おおまかなエリアを決めたら、土地探しを始めましょう。希望するエリアによっては「いいと思う土地は高すぎて手が出ない」と感じるかもしれません。そんなとき目に入ってくるのが、ややイレギュラーな代わりに割安な土地。「少しでも賢く購入したいものの、本当に購入してもいいのか」と心配になりそうな条件と、判断基準をチェックしましょう。
用途地域を確認する
用途地域により、どのような建物が建つ可能性があるのか分かります。
「用途地域」は都市計画法による区分で、住居系・商業系・工業系に分類されます。用途地域によって、建てることができる建物の種類や高さ制限、建ぺい率、容積率といった基準が異なります。同じような住宅街に見えても、低層の建物しか建たない地域もあれば、オフィスビルも建つ地域、パチンコ店やカラオケ店などを建てられる地域、工場も建つ地域など様々です。購入したい土地が見つかったら、どのような用途地域にあるのか調べるとともに、周囲に高い建物が建つリスクや、周辺環境が一変し、騒音や日照不足に悩まされる心配がないか確認しましょう。
「整形地」ではない土地を購入するメリット・デメリット
一般的に、土地の形は正方形や長方形の「整形地」を思い浮かべる人がほとんどだと思います。対する「不整形地」は販売価格が抑えめで、固定資産税や都市計画税の評価額も低いので、興味を持った方がいるかもしれません。
例えば、地表面が水平面に対して30度を超える角度の「崖地」に家を建てようとした場合、土留めや盛り土などの工事が必要になります。プラスアルファの工事を行う金銭的負担や、住宅ローン審査が通りにくいリスクを踏まえてもその土地を購入する価値があるのか考える必要があります。
道路に接する路地部分が細長く、奥に敷地がある形状の「旗竿地」は、周囲を建物に囲まれていることが多いので、採光や通風の工夫が必要になるでしょう。駐車スペースが必要な場合、路地部分に停めることができるサイズのマイカー選びが求められます。また、「崖地」同様、建築コストが余分にかかる可能性や、住宅ローン審査が通りにくいリスクがあります。しかし、リーズナブルな価格で購入しやすく、道路から奥まった土地である故、静かな環境を作りやすい側面もあります。設計の工夫次第では、路地部分をアプローチと捉えて演出に活かすことも可能です。
建築条件付きの土地
建築条件付きの土地は家を建てる建築会社や家の内容がある程度決まっていますが、建売住宅よりは自由な家づくりが可能です。
建築条件付きの土地とは、売主が買主に対し、家を建てる建築会社を指定。一定期間内にその会社で家を建てる約束のもと販売される土地のことを指します。売主側としては土地と建物の両方で利益を見込めるため、土地価格を建築条件のない土地に比べて割安に設定しているケースが多いでしょう。注文住宅のようにはいきませんが、ある程度希望する間取りや設備の家を建てることができるので、家づくりに特殊な要望がないのであれば、抑えた価格で土地を購入できる有効な手段といえるでしょう。
借地権付きの土地
土地情報をチェックしていて「あれ? この土地は相場よりもずいぶん安い」と思ってよく見ると「所有権」ではなく「借地権」と記載されていた……そんな経験はありませんか? 借地権とは、建物を建てる目的で地代を支払い、地主から土地を借りる権利のこと。主に「旧借地権」と、1992年(平成4年)に制定された「借地借家法」で定める「普通借地権」、期間が満了するとともに地主に返還することが決められている「定期借地権」に分類できます。
「旧借地権」は土地を借りている側に有利な面が大きく、地主から契約解除を求められるリスクが少ない契約です。「普通借地権」は「旧借地権」同様、契約更新を前提としている契約です。ただし「旧借地権」の存続期間が30年で、以後20年おきの更新(木造の場合)なのに対し、「普通借地権」の存続期間は当初30年で、1回目の更新は20年、2回目以降の更新は10年おきとなっています。「定期借地権」は契約満了後(一般的に50年)、土地を更地にして返却するので何も残りませんが、相続を考えていないのであれば手頃な値段で土地を借りることができる契約です。
借地権付き土地のメリット・デメリット | |
メリット | デメリット |
所有権付きの土地と比べて格段に安い | 地主に地代を支払う必要がある |
不動産取得税や、毎年の固定資産税・都市計画税を支払う必要がない | 建て替えやリフォームをする場合は地主の許可が必要 |
旧法借地権の契約であれば、更新料さえ支払えば土地を借り続けることができる | 住宅ローン審査で苦戦するケースがある |
借地権付きの土地は、所有権付きの土地と比べて格段に安いこと、土地を所有していないので土地購入時にかかる不動産取得税や、毎年の固定資産税・都市計画税を支払う必要がないことが魅力です。また、旧法借地権の契約であれば、更新料さえ支払えば半永久的に土地を借り続けることができます。その代わり、地主に地代を支払う必要があること、建て替えやリフォームをする場合は地主の許可がいること(建て替え時には「建替承諾料」が必要)、担保評価が低くなるので住宅ローン審査で苦戦するケースがあることなど注意が必要です。
ハザードマップの警戒区域やその近くの土地
2020年の法改正により、宅建業者は不動産取引時にハザードマップによる水害リスクの説明をすることが義務付けられました。しかし、契約直前ではなく、土地を検討する段階でハザードマップを確認し、災害リスクを知っておきたいものです。
近年、地震や台風といった自然災害による被害が相次いで発生しています。できるだけ自然災害のリスクが少ない土地を購入したいと考えている方も多いのではないでしょうか。土地を購入する前には自治体が出しているハザードマップを確認し、地震などの激しい揺れが原因で、地盤が液体のように流動化してしまう「液状化」や、河川の氾濫や大雨・高潮による浸水が想定される「洪水浸水想定区域」などを確認しましょう。合わせて、不動産会社の担当者などに「土地の歴史」を尋ねてみましょう。ハザードマップでは分からなかった情報を得ることができるかもしれません。
いざというときのために「指定緊急避難場所」やそこに至る経路を確認しておくことも重要ですし、購入する土地の状態を事前に把握しておくことで、火災保険に加入する際の条件を設定しやすくなります。多少のリスクを承知で土地を購入する場合は、災害に強い家づくりによって対策を講じることも可能です。
災害に強い家づくりについては、こちらの記事もご参照ください。
◆安心して住める一戸建ての条件は?一級建築士が教える災害に強い家づくりのポイント
まとめ
後悔することなく土地を購入するために、チェックしたいポイントはたくさんあります。子どもの年齢や家族構成、ライフスタイルにより重視するポイントは異なってきます。この記事を理想のマイホームを作る土地探しの参考にしてください。
建物選びのご参考にはこちらの記事をご覧ください。
◆モデルハウスの内覧・見学はいつすればいい?プロがすすめるマイホーム計画の立て方
◆住宅のプロ直伝! VR住宅内覧で効率よくマイホーム計画を進める方法とは?
ラジオパーソナリティを経てフリーライターに。
住宅・インテリア・不動産分野を中心として、介護・グルメ・トラベルなどのジャンルでも執筆。
リフォームや注文住宅関連の住宅情報誌をはじめ、雑誌、書籍、新聞、インターネットなどのさまざまな媒体で取材・執筆を手掛けている。