春の訪れとともに、花粉が気になる季節となりました。花粉症の原因とされるアレルゲン物質を含んだ花粉は、日本では1年中飛散していますが、その中でもメジャーなスギ(ヒノキ)花粉は、主に2~4月に飛散量のピークを迎えます。
では、花粉症の症状を抑えるには、なにをすれば良いのでしょうか? お家でできる花粉対策とは? 健康を守るお掃除のスペシャリストとして、医療の現場などで広く活躍されている松本忠男さんにお話を伺いました。
お話を伺った松本忠男さん プロフィール
医療環境管理士
(株)プラナ代表取締役社長、ヘルスケアクリーニング(株)代表取締役社長
フロレンス・ナイチンゲールの著書「看護覚え書」に共感し、33年間、病院の環境衛生に携わる。亀田総合病院では100人近く、横浜市立市民病院では約40人の清掃スタッフを指導・育成し、これまで現場で育ててきた清掃スタッフの総数は700人以上。現場で体得したコツやノウハウを、多くの医療施設や高齢者施設、店舗、家庭などに発信する。
2019年1月からは、中国の深圳市宝安区婦幼保健院(1000床病院)の環境整備を指導するなど、活動の場は海外にも広がる。
医療環境管理士の松本忠男です。私が編み出した「健康を守るお掃除術」とは、病気の原因を徹底的に“可視化”した科学的な掃除法です。レーザー光線や微粒子可視化カメラなどを使って、目には見えないホコリや花粉などの動きを可視化、流体力学や熱力学を用いて、室内での風の動きや温湿度の変化による身体への影響を把握しました。そうして生み出された科学的エビデンスに基づいた掃除法で、皆様を花粉症から守る方法をお教えいたします。
花粉症対策の基本は「花粉をお家に持ち込まない」
まずは、花粉を屋内に持ち込まないための意識を高めましょう。そのために重要なのが、「肉眼では確認できない花粉がどこにあるのかを把握する」ことです。花粉はお家の中で生まれるわけではなく、必ず外から持ち込まれます。人の出入りのある玄関や換気をする窓などは特に多いですね。また、人の動きによって拡散されることもあります。たとえば、玄関からお家に入って、衣服や髪に花粉が付いたままウロウロしてしまうと、いたるところに花粉が広がってしまいます。そうなると、花粉がどこにあるのかを把握できなくなり、取り除くことが困難になるので、玄関でしっかりと対策しましょう。
帰宅時、衣服や髪についた花粉を取り除くには?
玄関先で、服や髪に付いた花粉を地面に落とすため、手でパパッと払っていませんか? このやり方はNGなので、注意しましょう。手で払うと風が起こるので、花粉が舞い上がってしまいます。つまり、地面に落ちる前に、身体の別の場所に付いてしまうだけなのです。
花粉をしっかり取り除くには、使い捨てのウエットシートなどを玄関先に置いて、それを優しくペタペタと衣服や髪に押し付けて取るのがオススメです。花粉は湿ったシートにくっつきますので、お家の中に持ち込む花粉の量を大幅に減らせます。使用済みのシートを捨てるゴミ箱やアウターを掛けるハンガーラックも玄関に置いておきましょう。外から風に乗って入ってきた花粉を吸ってくれる空気清浄機を置くのも良いですね。
そのうえで、着替えは乾いた浴室で行いましょう。ウエットシートを使えば、衣類の表面上の花粉は取り除くことができますが、着替えの際は風が起こるので、繊維の奥にからまった花粉が飛散する可能性があります。扉を閉めた状態の乾いた浴室であれば、花粉は床にたまると把握できるので、まとめて洗い流すことができるわけです。
お家の中で花粉がたまりやすい場所と掃除方法
お家の中で花粉がたまりやすい場所①壁や壁沿いの床の隅
お家の中に入ってきた花粉は、障害物がなければそのまま床に落ちるものが多いです。しかし、風が強く起こる場所では、風に乗って壁に付着するということを覚えておきましょう。たとえば、部屋の中でエアコンが稼働していると、エアコンの風に流された花粉は壁や扉にたまり、そこから落ちて部屋の隅に広がっていきます。窓からの風も同じことが言えますね。大切なのは、風がどこに向かって吹いているかを観察し、花粉のたまりやすい場所を把握することです。ほかにも、人の行き来が多い廊下と階段の“隅”も、移動によって起こる風の影響で、花粉がたまりやすくなります。
壁を掃除する際は、「化繊はたき」を使うのが良いでしょう。風が起こらないようにゆっくり、なでるように花粉を取り除きます。使用後は取った花粉を飛散させないため、その場でビニール袋に入れて保管し、定期的に水洗いをします。再び使用するときは、必ず乾いているのを確認してから使うようにしましょう。
床掃除には「松本式スクイージー」がオススメです。これは市販のスクイージーのゴム部分に、5ミリ間隔で切り込みを入れたものです。切り込みを入れることで、花粉を取りやすく、さらに舞い上がりにくくなるので、床掃除の際に重宝するでしょう。このスクイージーを一定方向に動かして、花粉を取り除きます。
スクイージーが無い場合は、乾いたモップやマイクロファイバークロスを使用しても問題ありません。ただし、必ず乾拭きをするようにしてください。水拭きをしたくなると思いますが、床に使用すると花粉を広範囲に付着させてしまうだけなので、注意しましょう。
お家の中で花粉がたまりやすい場所②窓の近くやカーテン
窓を開けると、風とともに入ってくる花粉が、窓の近くや風下にたまります。また、カーテンは窓と向かい合った面、つまり裏側に花粉が付きやすく、その状態で開閉してしまうと付着した花粉が舞うので、特に注意が必要です。
窓の近くの壁や床は、先ほど紹介した化繊はたきや松本式スクイージーを使って掃除します。カーテンの掃除方法として一番確実なのが、丸洗いすることです。それが難しい場合は、粘着カーペットクリーナーを優しくかけましょう。力を入れすぎると、カーテンがよじれて花粉がうまく取れないうえに、風が起きて飛散してしまうので要注意。カーテンは、クリーナーを動かす方向とは反対の向きにゆっくりと引っ張り、ピンと張った状態でかけるのがベストです。
お家の中で花粉がたまりやすい場所③カーペット
花粉が部屋の中に入ると、カーペットの上にたまる可能性があります。入ってきたばかりの花粉は、ふわりとカーペットの表面に乗っていることが多いので、掃除機で吸うようにしましょう。その際も、風を起こさないようにゆっくりとかけます。
オススメの掃除機は、コードレスで簡単に持ち運びができるスティック型のものですね。軽いので扱いやすく、コードが引っかかって花粉が飛散する心配もありません。ただし、排気口が上についているタイプが多いので、そこから出る風には注意しましょう。カーペット自体に風が当たらなくても、壁に当たることで花粉が舞ってしまう恐れがあります。なので、排気口の位置をしっかり確認するか、あらかじめ壁に付いた花粉を取り除くなどの対策をしておきましょう。
花粉の時期は外干しを控えて布団乾燥機を活用
天気の良い日は、外に布団を干したくなりますが、花粉症の方は控えるのが無難でしょう。また、布団をほしたあとに花粉を落とそうと、布団叩きでパンパンと叩いてしまう方もいらっしゃいますが、それはNGです。強く叩くことで布団の繊維を痛めてしまうことがありますし、布団の中にあるダニのフンが外に飛び出すなど、別のアレルゲン物質に悩まされることも。叩くことで布団の表面に付いた花粉が舞い上がって、その花粉を吸ってしまうリスクもあるので、注意が必要です。
一方で、人間の体からは、寝ている間にペットボトル1本分くらいの水分が出ると言われているので、布団の湿気やダニの繁殖が気になってしまう方も多いでしょう。そのような方には、湿気やダニを効率的に除去してくれる布団乾燥機を活用するのがオススメです。また、布団が洗える素材のものであればコインランドリーで洗ったり、クリーニング店でキレイにしてもらったりするのも良いと思います。
換気の方法は? コロナ禍での花粉対策
花粉症に悩む方の多くは、花粉の時期に窓を開けることを控えていたと思います。しかし、コロナ禍において換気は重要なので、こまめに窓を開けなければいけません。そうすると当然ですが、花粉も屋内に入ります。花粉症対策と換気のどちらを取るのか、その折り合いをどうするかというのは非常に難しい問題だと言えるでしょう。
換気の理想は、一方の窓を空気の入り口、もう一方の窓を空気の出口として合計2ヶ所の窓を開けることですが、それをしてしまうとお家のいたるところに花粉が入ってきてしまいます。ならば、せめて花粉が入る量を減らす工夫をしましょう。
手軽にできる方法のひとつとして、サーキュレーターを活用する方法があります。ファンを回すと後方から部屋の空気を取り込んで、前方に空気を押し出すので、遠くまで届く風を直線的に起こします。換気用の窓を1ヶ所だけ開けて、サーキュレーターをその窓に向けて動かせば、花粉の侵入をある程度は防いでくれることでしょう。換気後は化繊はたきや乾いたモップなどで窓周辺を掃除することも忘れないでください。
また、スギ(ヒノキ)花粉が飛ぶ時期は、空気が乾燥しやすい時期でもあります。部屋の中が乾燥していると花粉が舞って広がりやすくなるので、加湿器を併用することもオススメします。
健康を守るお掃除士が教える花粉症対策 まとめ
最も効果的な花粉対策は、外から花粉を入れないことですが、コロナ禍においては現実的ではありません。なので、お家の中に入ってしまったとしても、どの程度の量がどう広がっているかを知ることが重要です。花粉がたまる位置を把握することで花粉を減らす対策がしやすくなり、皆様の健康を守ることに繋がるのではないかと思います。
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